たとえば、休職期間満了まであと3週間。休職に入るときに「療養に専念してください」と伝えたきり、本人とはほとんど話していません。そこへ主治医の「来月から復職可」という診断書が届き、上司からは「自分では決められない」と返ってきます。
連絡を控えてきたのは、療養を乱したくない気づかいです。ただ、休職期間満了は会社が復職を決める日なので、決めるための材料は、通知より先に産業医と集めておけます。
このページでは、この1件を最後まで追いながら、負担にならない連絡の中身と、休職期間満了の前に産業医と決めることをまとめます。
このページの要点
- 休職期間満了の前に連絡できないのは、療養を乱したくない気づかいから
- 負担になるのは「報告して」の連絡、安心になるのは会社が期間と戻り方を渡す連絡
- 休職期間満了は、就業規則で会社が決めた、復職を決める日。材料は産業医と前から集められる
あと3週間で休職期間満了なのに、本人とはほとんど話していなかった
休職期間満了の3週間前に「復職可」の診断書が届いて、何も決まっていないことに気づきます。通知を出すのか、職場に戻すのか、誰が決めるのかも、まだ決まっていません。
連絡は、傷病手当金の書類だけだった
休職に入って5か月、会社から本人への連絡は、傷病手当金の書類のやりとりだけでした。就業規則の休職期間は6か月で、休職期間満了の日は最初から分かっていました。
それでも、満了の話を本人にしたことは一度もありません。話せば、辞めてほしいと言っているように聞こえる気がしたからです。
「自分では決められない」で止まる
届いた診断書を上司に見せると、「自分では決められない。上と相談してから」と返ってきます。人事も、主治医の「復職可」でそのまま戻してよいのか分かりません。
公開されている相談の中にも、復職可の診断書を伝えたら「部長、専務と相談してから連絡する」と言われ、そのまま止まったという社員の声がありました。診断書が届いても、会社の中で誰が決めるかが決まっていなければ、話はそこで止まります。
本人に休職期間満了の話を切り出せなかったのは、療養を乱したくなかったから
休職中の社員に連絡を控えるのは、人事として自然な気づかいです。連絡そのものが療養の負担になるかもしれない、と考えるのは間違っていません。
「連絡が来るたびにストレス」という声
公開されている相談を調べた中に、休職中に上司から「2週間に1度くらい様子を報告して」と言われ、連絡が来るたびにストレスを感じるという声がありました。閲覧数は7万を超えています。
連絡を控えた人事の気づかいは、社員の側の声とも合っています。
「ある日突然、本日で満了」という声
一方で、同じように休職していた社員から、正反対の声もあります。休職期間がいつまでなのかの連絡もないまま、ある日突然、人事から「本日をもって休職期間満了となるため自然退職」と告げられた、という相談です。
連絡が来てもつらい。来なくても、最後に突然知らされてつらい。連絡してもしなくても、社員を苦しめてしまうように見えます。
負担になるのは「報告して」の連絡、安心になるのは休職期間満了までの道のりを渡す連絡
2つの声を並べると、分かれ目は連絡の回数ではなく中身です。負担になるのは社員に報告させる連絡で、安心につながるのは会社から情報を渡す連絡です。
報告させる連絡と、会社が渡す連絡
分かれ目は回数ではなく、誰が何を書くかです。
| 報告させる連絡 | 会社が渡す連絡 |
|---|---|
| 「様子を報告してください」 | 「休職期間は○月○日までです」 |
| 社員が自分の状態を言葉にして出す | 会社が期間・お金・段取りを書いて出す |
| 返事を書くまで終わらない | 返事はいらない |
| 届くたびに、療養の手が止まる | 読み返すたびに、先が見える |
報告させる連絡は、療養に宿題を出す
療養中の社員にとっては、返事を書くこと自体が宿題になります。
産業医の側から言えば、体調の確かめは主治医と産業医が受け持つもので、上司や人事が毎回聞き取らなくてよいものです。
渡す連絡は、先の見通しになる
反対に、会社から渡せる情報があります。厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」も、休業の初めに伝える情報を挙げています。
休職の初めに渡す情報
返事を求めない一通にまとめられます。
| 渡すこと | 中身の例 |
|---|---|
| 休職期間 | ○月○日まで(就業規則の休職の条) |
| その間のお金 | 傷病手当金の申請の流れと、会社が書く欄 |
| 戻るときの段取り | 主治医の診断書、産業医の面談、会社の決定の順 |
| 困ったときの相談先 | 人事の窓口と、産業医に相談できる方法 |
この表の根拠
- 休業の初めに伝える情報:傷病手当金などの経済的な保障/不安、悩みの相談先の紹介/公的または民間の職場復帰支援サービス/休業の最長(保障)期間等(厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」第1ステップ)
- 休業中の接触:休業者に接触することが望ましい結果をもたらすこともある。本人が不安に感じていることについて十分な情報を提供することが重要(同手引き)
休職期間満了の日を伝えることは、追い出しではなく、先の見通しを渡すことです。
止まったのは、何を渡すかが決まっていなかったから
この1件で連絡が止まった理由は、何を渡すかが決まっていなかったことにあります。休職に入る日に、渡す情報と時期を決めておけば、連絡は気づかいのまま続けられます。
たとえば、次のような一通です。「休職期間は○月○日までです。その間の手当と、戻るときの段取りを書いた紙を同封します。返事はいりません。体調のことは、主治医と産業医にお任せください」。
返事を求めない一通なら、療養の邪魔をせずに、休職期間満了までの道のりを渡せます。
法律に休職の決まりはない:休職期間満了は、就業規則で会社が決めた復職を決める日
休職期間満了の日は、法律ではなく、会社の就業規則で決まっています。厚生労働省の「モデル就業規則」の解説も、休職の定義、休職期間の制限、復職については、労働基準法に定めがないとしています。
モデル就業規則の書き方
モデル就業規則の第9条は、休職のあいだに起きることを、場面ごとに分けて書いています。
モデル就業規則第9条の書き方
自社の就業規則の休職の条と見比べてください。
| 場面 | モデル就業規則の書き方 |
|---|---|
| 休職の理由がなくなったとき | 原則として元の職務に復帰させる |
| 元の職務に戻すのが難しいとき | 他の職務に就かせることがある |
| 休職期間が満了しても治らず、働くことが難しいとき | 休職期間の満了をもって退職とする |
この表の根拠
- 第9条第2項:休職期間中に休職事由が消滅したときは、原則として元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある
- 第9条第3項:休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする
- 解説:休職の定義、休職期間の制限、復職等については、労基法に定めはありません(厚生労働省「モデル就業規則」令和7年12月版)
自社の就業規則の休職の条にも、休職期間の長さと、満了したときの扱いが書かれています。長さも書き方も、会社によって違います。
満了の日は、辞めてもらう日ではなく、復職を決める日
この書き方を読むと、休職期間満了の日にすることは、退職の手続きより先に、戻れるかどうかを決めることだと分かります。休職期間満了は、会社が復職を決める日です。
決めるのが会社なら、決める材料を集め始めるのも会社です。主治医の見立て、産業医の意見、戻る職場の事情は、満了の直前を待たずに集めてかまいません。
主治医の「復職可」が休職期間満了の直前に届いたら、産業医と見ること
主治医の「復職可」は、会社が決めるための材料の1つです。会社はそれを産業医に渡し、職場で働けるかについて意見を聴きます。
主治医と産業医は、見ているものが違う
主治医と産業医が見ていること
どちらの見立ても、会社が決める材料になります。
| 主治医が見ること | 産業医が見ること |
|---|---|
| 病気がどこまで回復したか | その職場で、その仕事を続けられるか |
| 治療をどう続けるか | 通勤・勤務時間・戻る部署の仕事 |
| 「復職可」の診断書を書く | 会社に意見を出し、会社が決める材料にする |
同じ「復職可」でも、どの仕事に、どの時間で戻れるかまでは、診断書だけでは分かりません。元の職務が難しければ、他の職務も検討できるとモデル就業規則は書いています。
この1件で、産業医が最初に確かめること
3週間前に届いた1件なら、産業医が最初に確かめるのは、たとえば朝起きて通勤と同じ時間に動ける日が続いているか、戻る部署がどんな仕事を任せられるか、といったことです。
主治医への照会が要るときは、本人の同意をとって、会社と産業医から書面で尋ねます。3週間あれば、照会と面談を1回ずつ入れられることが多いものです。
産業医の意見の理由が分からないときの聞き返し方は、お悩み「産業医が高圧的で意見を聞き返せない」で、復職の場面に沿って書いています。
復職できないまま休職期間満了を迎えるときも、会社から渡せるもの
戻れないと決まったときも、最後の連絡で会社から渡せるものはあります。社員がその連絡で知りたいのは、「クビになるのか」「この先の暮らしはどうなるのか」です。
書面で、日付と理由を渡す
休職期間満了で退職となるときは、書面で伝えます。口頭だけだと、社員は何が決まったのかを後から確かめられません。
休職期間満了で退職となるときの書面
社員が後から読み返せる形で渡します。
| 書面に書くこと | 中身 |
|---|---|
| 退職の根拠 | 就業規則の休職の条 |
| 退職の日付 | 休職期間満了の日 |
| これからの手続き | 離職票・健康保険の切り替えなど、会社が出す書類と時期 |
| 問い合わせ先 | 離職理由や失業給付は、社会保険労務士やハローワークで確かめられること |
最後の連絡の受け取られ方は、それまでの数か月で決まる
公開されている相談を調べた中には、退職が決まった電話で、人事から「あなたは会社を訴えますか?」と聞かれた、という声もありました。会社が身構えているほど、その身構えは社員に伝わります。
休職期間満了の日付を最初から渡し、途中で戻り方を渡してきた会社なら、最後の連絡は突然の知らせになりません。同じ「退職」でも、待ってもらったと受け取るか、追い出されたと受け取るかが変わります。
退職を拒まれたときの扱いなど、法的な判断が要る場面は、このページでは扱いません。弁護士や社会保険労務士に相談してください。
産業医が休職期間満了の直前にしか出てこないなら、見直してよい
休職期間満了の直前に初めて産業医に話が来る形では、会社が決める材料がそろいません。休職の始まりから産業医が入っていれば、満了の日は、集めた材料で決める日になります。
休職の始まりから、復職の条件まで
サンダーメディコは、休職・復職の判定を、主治医への照会から復職の条件まで一緒に整理しています。意見書には、判断だけでなく、配慮・期間・再確認の条件まで書きます。
会社が決める日に、決める材料が手元にある形をつくることも、産業医の仕事だと考えています。導入事例「復職の判断に迷ったとき、すぐ相談できる産業医」では、契約先の人事の方が、復職の判断で産業医に相談した場面を話しています。
今の契約のままでも、相談できる
サンダーメディコには、今の産業医との契約が続いたままでもご相談いただけます。相談は30分・オンラインで、担当予定の産業医本人が伺います。
休職期間満了の日付と、届いている診断書の内容をそのまま見せてください。満了までに何を集めればよいかを、一緒に決めます。
よくある質問:休職期間満了の前に人事が迷うこと
- 休職中の社員に、会社から連絡してもよいですか?
- 連絡してかまいません。負担になりやすいのは、様子を報告させる連絡です。休職期間や手当、戻るときの段取りなど、会社から渡す情報を、返事を求めない形で送ると、療養の邪魔になりにくくなります。
- 休職期間満了の日は、いつ本人に伝えればよいですか?
- 厚生労働省の手引きは、休業の初めに、休業の最長(保障)期間などを伝えるよう示しています。伝えそびれていたなら、気づいた今、満了の日と、それまでに会社がすることを一緒に伝えてください。
- 休職期間満了の通知は、いつ出せばよいですか?
- 就業規則に定めがあれば、それに従います。定めがないときや迷うときは、社会保険労務士に確かめてください。通知の前に、復職できるかを決める材料を産業医と集めておくと、通知の中身も決めやすくなります。
- 休職期間満了の直前に「復職可」の診断書が届いたら、どうすればよいですか?
- 診断書を産業医に渡し、職場で働けるかについて意見を聴きます。主治医は病気の回復を、産業医はその職場で働けるかを見ています。両方を材料にして、決めるのは会社です。
- 本人が休職期間満了での退職に納得しないときは、どうすればよいですか?
- 法的な判断が要る場面なので、弁護士や社会保険労務士に相談してください。満了までのやりとりを日付と一緒に残しておくと、相談の場で状況を伝えやすくなります。
- 人事が1人だけの会社でも、相談してよいですか?
- 相談してください。人事が1人の会社ほど、休職中の社員への連絡も、休職期間満了の判断も、一人で抱えることになります。気になっていることを、そのままお聞かせください。
社員を待った会社が、休職期間満了の日に復職を決める
連絡を控えてきたのは、療養を乱したくない気づかいでした。その気づかいを、休職期間満了の日付と戻り方を渡す連絡に変えれば、最後の知らせは突然になりません。
満了の日は、待った会社が産業医と決める日です。何から集めればよいか迷うときは、気になっていることをそのままお聞かせください。


















