たとえば、産業医の選任の期限まで1か月。産業医紹介サービスから届いた候補3人の経歴書は、どれも資格十分です。社長には「経験の長い先生にしました」と言える1人を選びました。
紹介で探して、経歴で選ぶのは、社内に説明できる自然な選び方です。ただ、資格の要件にも経歴書にも、話し方や実務の進め方は載っていません。決める前に、担当する医師本人と話して確かめてかまいません。
このページでは、この1件を追いながら、経歴書に載らないものと、決める前に本人に聞くことをまとめます。
このページの要点
- 産業医紹介サービスで探し、経歴で選ぶのは、社内に説明できる自然な選び方
- 資格の要件にも経歴書にも、話し方や実務の進め方は載らない
- 決める前に担当医本人と話して、会社の事情の聞き方と次の一手の出し方を確かめる
届いた産業医紹介サービスの経歴書では、話しやすさまでは分からなかった
産業医紹介サービスの経歴書で比べられるのは、資格と経歴と、対応できる地域です。話しやすさや、相談への答え方までは書かれていません。
3人とも、資格は十分だった
1人目は産業医の経験が15年。2人目は大学病院の内科で勤務。3人目は労働衛生コンサルタントの資格を持っています。
どれも、産業医として十分な経歴です。経歴書を何度読み比べても、決め手は見つかりませんでした。
経歴書で分かること、分からないこと
右の列は書類では分からず、話して分かることも、使い始めて分かることもあります。
| 経歴書で分かること | 経歴書では分からないこと |
|---|---|
| 産業医の資格と、取った年 | 会社の事情をどう聞くか |
| 産業医としての年数と、担当した会社の数 | 人事が聞き返したときの答え方 |
| 専門の診療科 | 意見のあとに、次の一手まで出すか |
| 対応できる地域と、訪問の頻度 | 急ぎのときに、本人が出られるか |
決めたのは、社内に説明しやすい1人
選んだのは、産業医の経験が15年の1人目でした。社長にも「経験の長い先生にしました」と説明でき、話はすぐに通りました。
経歴で選んだのは、産業医紹介サービスの資料で社内に説明できたから
経歴で選ぶのは、産業医紹介サービスの資料で比べられるのが経歴だからです。医師を選んだことの少ない人事にとって、社内に説明できる選び方は大事です。
比べる材料が、経歴しかない
医師の知り合いがいない会社にとって、紹介サービスは頼りになる入口です。紹介されたあとに手元にあるのは、経歴書と料金です。
比べられるものだけで比べたのですから、選び方として間違ってはいません。
困るのは、契約のあと
ただ、経歴書で比べられないことは、話してみて分かることもあれば、使い始めてから分かることもあります。
資格の要件に、話し方は入っていない:産業医紹介サービスの経歴書に載らないもの
産業医になるための要件は、医学の知識と研修です。会社との話し方や、実務の進め方は、要件に入っていません。
産業医になれる人
労働安全衛生規則の書き方を短くしました。
| 産業医になれる人 | 法令の書き方 |
|---|---|
| 研修を修了した医師 | 厚生労働大臣の指定する研修を修了した者 |
| 大学で課程を修めた医師 | 産業医科大学などで所定の課程を修め、実習を履修した者 |
| 試験に合格した医師 | 労働衛生コンサルタント試験(保健衛生)に合格した者 |
| 大学で教える医師 | 労働衛生の科目を担当する常勤の教授・准教授・講師 |
この表の根拠
- 第14条第2項:厚生労働大臣の指定する研修を修了した者/産業医科大学などで所定の課程を修めて卒業し、実習を履修した者/労働衛生コンサルタント試験(保健衛生)に合格した者/大学で労働衛生に関する科目を担当する常勤の教授・准教授・講師(またはその職にあった者)/ほか厚生労働大臣が定める者(労働安全衛生規則)
- 第14条第7項:産業医は、労働者の健康管理等を行うために必要な医学に関する知識及び能力の維持向上に努めなければならない
資格は、医学の知識の約束
資格があれば、産業医として働くための医学の知識はあります。ただ、会社の事情を聞く力や、人事が聞き返しやすい話し方は、資格では分かりません。
産業医の側から言えば、ここは医師によって違いが出るところです。同じ資格を持っていても、会社とのやりとりの仕方は人それぞれです。
産業医を決めたあとに困ること:産業医紹介サービスで選ぶ前に知っておく
他の産業医から切り替えて来られた企業から、契約のあとに困ったことを伺っています。どちらも、経歴書だけでは見えなかったことでした。
話し方が強く、聞き返せなかった
ある企業では、産業医の話し方が強く、人事担当の方が相談や聞き返しをしにくくなっていました。産業医の意見に疑問があっても、そのまま進めていたそうです。
経験の長さは経歴書に載りますが、聞き返しやすさは載りません。
質問しても、次の一手が返らなかった
別の企業では、質問しても具体的な対応方針が示されなかったそうです。人事の方も産業保健に詳しくないので、どう進めればよいか分からなくなっていました。
資格があることと、次に会社がすることまで示せることは、別のことです。切り替えて来られた企業が言えずにいたことは、お悩み「産業医に相談しにくいのは社員だけではない」にまとめています。
担当医本人と話して確かめる:産業医紹介サービスで決める前に聞くこと
決める前に担当医本人と話せば、話しやすさや会社の事情の聞き方は見えてきます。聞くことは、会社の困りごとに沿ったものにします。
決める前に、担当医本人に聞くこと
答えの中身より、答え方を見ます。
| 本人に聞くこと | 答えで見えること |
|---|---|
| 「会社について、どんなことを先に知っておきたいですか」 | 会社の事情を聞く姿勢があるか |
| 「意見の理由を聞き返したら、どう答えていただけますか」 | 人事が聞き返しやすいか |
| 「意見のあと、会社が次にすることまで伝えていただけますか」 | 次の一手まで出すか |
| 「急ぎの相談には、先生ご本人が出られますか」 | 担当医とのつながりが続くか |
答えの中身より、答え方を見る
産業医の側から言えば、こうした質問にどう答えるかで、その医師が会社とどう付き合うかが見えます。うまく答えられなくても、聞き返して確かめてくれる医師なら、契約のあとも話しやすいはずです。
会社の困りごとを一緒に考える医師かどうかは、話してみて初めて手がかりが得られます。
顔合わせで違うと感じたら、産業医紹介サービスに言ってよい
顔合わせで「少し違うかもしれない」と感じたら、産業医紹介サービスに伝えてかまいません。紹介してもらった手前、会社の側から断るのは気を使いますが、選び直してよい場面です。
断りにくさは、先に外しておく
顔合わせの前に、窓口へ「合わなかったら、別の候補もお願いしたいです」と伝えておきます。先に言っておけば、断ることが失礼になりません。
顔合わせの進め方と、選任までの手順は、コラム「50人以上で産業医がいないと罰金?」で解説しています。
担当医の顔が見えないなら、産業医紹介サービスと並べて本人に相談できる窓口も使ってよい
産業医紹介サービスと並べて、担当する医師本人に相談できる窓口を使ってもかまいません。比べる相手が増えれば、話しやすさや考え方も比べられます。
担当予定の産業医本人が伺う
サンダーメディコの相談は30分・オンラインで、担当予定の産業医本人が伺います。担当産業医のページでは、顔と経歴、担当してきた実績を先に見ていただけます。
初めての選任の前でも、今の産業医との契約が続いたままでも、ご相談いただけます。話してみて違うと感じたら、そこで終えていただいてかまいません。ご契約後も同じ担当医が会社を見続け、直接ご相談いただけます。
よくある質問:産業医紹介サービスで決めるとき
- 産業医紹介サービスとは何ですか?
- 会社に産業医を紹介し、契約の手続きを手伝うサービスです。手数料の形や、紹介のあとに窓口が入るかどうかは、サービスによって違います。決める前に、担当する医師本人と話せるかを確かめてください。
- 紹介の前に、担当医と会うことはできますか?
- サービスによって違います。顔合わせができるか、合わなかったときに別の候補を出してもらえるかを、最初に窓口に聞いておくと安心です。
- 医師会から紹介された産業医でも、本人と話して確かめてよいですか?
- 確かめてかまいません。どこから紹介された医師でも、資格の要件は同じで、話し方や実務の進め方は人によって違います。
- 顔合わせのあとで断ったら、紹介サービスとの関係が悪くなりませんか?
- 顔合わせの前に「合わなかったら別の候補を」と伝えておけば、断ることは手順の一つになります。合わない医師と契約してしまうほうが、あとで手間がかかります。
- 今の産業医と合わないと感じたら、すぐ替えたほうがよいですか?
- 替える前に、合わないと感じた場面を思い出してみてください。話し方なのか、次の一手が出ないのかが分かれば、次の医師に聞くことも決まります。話し方が強いと感じるときは、お悩み「産業医が高圧的で意見を聞き返せない」も参考にしてください。
- 人事が1人だけの会社でも、相談してよいですか?
- 相談してください。人事が1人の会社ほど、医師選びも一人で決めることになります。気になっていることを、そのままお聞かせください。
産業医紹介サービスは入口、決めるのは担当医と話した会社
紹介で探して経歴で選んだのは、社内に説明できる選び方でした。決める前に担当医本人と話せば、話しやすさは経歴書より見えてきます。
誰に決めればよいか迷うときも、まだ困りごとが言葉にならないときも、そのままお話しください。

















